人形町酒亭きく家繁昌記

人形町にある料亭の女将さんが語る「きく家」の過去と現在。「語る」と書いたのは、実際に女将さんが話した内容をテープ起こししたからである。女将さんの話がメインで、ところどころごに主人である「親方」の話が挿入されている。 ほとんどお酒が飲めなかった女将さんは最初はお弁当も扱う小料理屋から出発し、何人かの板前さんの協力をえて店を少しづつ拡張していった。そして現在の親方（6歳年下）と結婚し（再婚）、他方でお酒の勉強を積み重ね（埼玉県の神亀酒造との出会いが大きかったようである）、東京でも有名な一流のお店に成長させた。 「きく家」の献立が一部紹介されている（pp.52-53)が、まさしく純日本的で美味しそうであり、また高そうである。先付、前菜、汁、小付、造り、椀、焼き魚、鮨、酢物、炊き合わせ、香の物、食事、果物、甘味と並ぶ。肝心なのは、その間、種々の日本酒が、惣菜にあわせて出されることである。出羽桜、北鹿、鷹勇、一の渡り、ひこ孫、といったようにである。 お店の内部、コース料理の写真が巻頭にあり、これも素晴らしい。接客態度などとにかくお客さんを大切にしていることが、よくわかる。 主な内容は以下のとおり。「江戸の粋筋の町・人形町」「初めて知った男性客のやさしさ」「5年で念願の一軒家に」「日本酒は新酒がおいしいか」「ワインと闘える日本酒を」「お客様に育てられた親方の腕」「つねに向上心あふれる料理を」「料理と相性のいいお酒とは」「きく家の味に合う人、合わぬ人」「商談のまとまる店といわれて」「お客様の心地よさを第一に」「マニキュア、茶髪は厳禁」「失敗は早め早めに対処する」「未収の最高額は５万円」