天皇は宗教とどう向き合ってきたか (潮新書)

私自身、無意識に、天皇家＝神道と十把一絡げに考えてしまっていました。先日、霊鑑寺の番組を見て募った？？？が解消され、さらに災害のあと膝を折って被災者の話を聞く天皇、祈りを捧げ、精力的に行幸啓を行う平成の天皇像がローマ法王につながっているという議論は本当に目からウロコでした。言われてみれば非常にカソリック的ですね。神社・寺院を巡っていると何度となく気付かされる、日本文化の起源としての「模倣と寛容」の歴史と伝統が忘れられず今日の皇室に息づいているのだとすれば、たとえその第一の動機が皇室の存続だったとしても、それは本当に驚くべきことだと思いました。本書では次の令和時代の天皇像についても触れられていますが、新天皇がどちらを選択するにせよ、天皇が人格（あるいは人間関係）を持っているということ自体が私を含む少なくない日本人の自己イメージにとって不都合な真実なのかもしれませんね。それと本書とは関係ないことですが、「退位」というのは皇室典範特例法で定められている公式な用語です。祭祀・儀式では「譲位」で良いので新聞社や一般人が使う分には構わないと思いますが、学者が「譲位」と言っては誰にも相手にされなくなりますよ。著者の近著「平成の終焉」は未読ですが、個人的には「皇后考」と併せて読むことをお勧めします。